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ダーウィンとマニュファクチャ2017.10.03


 労働の生産性は、労働者の技倆に依存するのみではなく、彼の道具の完全さにも依存する。切る道具、
穴をおける道具、押す道具、打つ道具等のような同種の道具が、種々の異なる労働過程で使用され、また
同じ労働過程でも、同じ道具が種々の作業に役立つ。しかし、一労働過程の種々の作業が互いに分離され、
また部分労働者の行なう各部分作業が、できるかぎり適当な、したがって専属的な形態をとるに至れば、
従来は種々の目的に用いられた道具の変化が、必要となる。その形態変化の方向は、もとのままの形態が
ひき起こす、特殊の困難の経験から出てくる。労働用具の分化、それによって同種の諸道具が、特殊の
各用途のための特殊の固定形態を、受取るのであり、労働用具の特殊化、それによっておのおののかような
特殊用具が、特殊の部分労働者の手によってのみ完全な力量で作用するようになるのであるが、
この二つのものが工場手工業を特徴づける。バーミンガムだけでも約五〇〇種の(ンマーが生産され、
そのおのおのが、特殊の一生産過程にのみ役立つというだけではなく、いくつかの変種は、往々もっぱら
同一過程内の異なる諸作業にのみ役立つ。工場手工業時代は、部分労働者の専属的特殊機能に、
労働用具を適応させることによって、この用具を単純化し、改良し、多種類にする
(注31)。これによって
同時に、この時代は、単純な諸道具の結合から成り立つ、機械装置の物質的諸条件を創り出す。

  
(31) ダーウィンは、その画期的な著書『種の起源』において、動植物の自然的器官にかんして
   こう言っている.
   「同一の器官が、種々の働きをなさればならないあいだは、その可変性の一原因は、おそらく次のことに
   見出されるであろう.すなわち.自然淘汰は、同じ器官が一つの特殊目的だけに向けられてあるばあい
   ほどの周到さをもってしないで、一々の形態上の小変異を保存したり、抑圧したりする、ということに。
   たとえば、種々のものを切るためのナイフは、大体においてほぼ一様の形態のものであってよいが、
   一種の用途にのみ向けられた道具は、すべての他の用途のためには、また別の形態をとらねばならない。」
    
( 新日本出版社より 『種の起源』、第5章「変異の法則」 岩波文庫上、p.192-193 )