資本論ワールド 2018年 ■ 2018年 総合案内ー最下にリンク
2018年 今年も1年間大変お世話になりました。
***** ****** **** **** ***** *****
2018資本論入門10月号
2018.10特集 児玉レポート
◆ 価値表現の構造分析と
価値形態の物神的性格について
・・・価値形態の物神的性格 概要・・・
10月号-1
~『資本論』を読みながら「商品の価値対象性」を考える~
第2章 商品の価値対象性について ・・・近藤レポート
『資本論』抄録-「ドイツ語キーワード並列と解説」・その1・・
労働生産物が、価値であるかぎり、その生産に支出された人間労働の、単に物的な表現であるという、後の科学的発見は、人類史上に時期を画するものである。しかし、決して労働の社会的性格の対象的外観 〔gegenständlichen Schein:対象的な仮象〕 をおい払うものではない。商品生産の諸関係の中に囚われているものにとっては、・・・終局的なものに見えるのである。 (『資本論』第4節p134)
◆ ◆ ◆ ◆
10月号-2 ヘーゲル 『大論理学』 第2巻 本質論
◆ 第1章 仮 象 Der Schein
本質は有から出て来たものとして、有に對立するように見える。そしてこの直接的な有はまず差し当っては非本質的存在( das Unwesentliche )である。 けれども第二に、この有は単に非本質的な有よりも以上のものであって、それはむしろ本質を欠くところの有、即ち仮象である。
第三に、この仮象は外面的なもの、本質に對する他者ではなくて、むしろ本質自身の仮象である。そしてこの本質のそれ自身における仮現が反省である。
◆ ◆ ◆ ◆
10月号-3 マルクス生誕200年記念
特別報告 2018.10.20
マルクス生誕200年を記念して、「『資本論』の物神性」の特別報告を行います。
第1回目は、「価値形態の物神的性格」を主たるテーマとして取り上げてゆきます。
『資本論』は、商品物神、貨幣物神そして資本物神としての生起する資本制生産様式を分析した科学書です。資本制社会では、個々の商品がこの社会の富の成素形態として現象し、貨幣から資本形態へと成長発展してゆきます。商品の物神性もこれらと歩調を合わせながら、商品変態の社会的物質代謝として社会的労働の価値対象性が貫ぬかれてゆきます。
すなわち、個々の商品が商品物神の担い手とすれば、この社会の富を構成する商品世界では、物神礼拝 Fetischismus に覆われた商品生産がこの富の成素形態を構成していることになります。したがって『資本論』の経済分析は、これら―商品の価値対象性、価値形態と交換価値、貨幣または商品流通で現象している「商品の物神的性格」の解明を目的としています。
・・・商品形態(価値形態)・・・
「土地の内奥から取り出されてきたままの金と銀とは、同時にすべての人間労働の直接的な化身である。このようにして貨幣の魔術が生まれる。人間がその社会的生産過程で、単に原子的な行動を採っているにすぎぬということ、したがって、彼らの規制と彼らの意識した個人的行為とから独立した彼ら自身の生産諸関係の物財的な姿は、まず、彼らの労働生産物が一般的に商品形態をとるということの中に現われるのである。したがって、貨幣物神の謎は、商品物神の目に見えるようになった、幻惑的な謎であるにすぎないのである。・・・(第2章交換過程)・・・
→ 資本論入門10月号 資本論“蒸留法”の解読と資本物神性の成立過程 2017.10.06
使用価値の 「抽象化(捨象)」 過程と ~資本物神性の成立~
◆ ◆ ◆ ◆
<コラム22> 2018.10
『資本論』の膠状物 (凝結物) Gallert について 第1回
* 編集部より・・・
「商品の物神性」議論の中で、Element としての Gallert・膠状物(凝結物) の位置づけが分かりづらいとの指摘がありました。編集部では、「商品の価値対象性」でも Gallertの重要性を確認するため、議論を継続して深めてゆきます。その第1歩として<コラム22>を活用してゆきますのでご検討ください。
・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~
2018資本論入門9月号
・価値形態 Wertform と 形式 Form の二重性 (3)
~『資本論』を読みながら「商品の価値対象性」を考える~
・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~
2018資本論入門8月号 2018.08.25
・価値形態 Wertform と形式 Form の二重性 (2) 2018.08.25
1. 商品の価値対象性 序論
2. 『資本論』のヘーゲル論理学と翻訳問題の検討
・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~
2018資本論入門7月号 2018.07.09
『資本論』 第1章第3節 価値形態または交換価値
a 「相対的価値形態の内実」 の研究
価値形態〔Wertform〕と、形式Formの二重性(1) 2018.07.25更新
~ 亜麻布の「等価 〔Äquivalent:同等のもの〕 としての、あるいは亜麻布と「 交換され得るもの 」 としての上衣に、関係せしめられることによってである。 この関係において、上衣は価値の存在形態〔Existenzform von Wert:価値の出現ー現われ出る形式。〕、すなわち、価値物 〔Wertding 〕となされる。 ~
◆ ◆ ◆ ◆
<コラム21> 2018.07
・資本論ワールド 人類学 ・ 考古学 ファイル
マルクス・フェティシズムFetischismus と コリン・レンフルー「物質的象徴」
・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~
2018資本論入門6月号 更新日:2018.06.23
第1部. 『資本論』の形態学W-G-Wと資本の生態系G-W-G´について (2)
『資本論』第2章交換過程と「価値形態」形成(形態化)について
~ 交換過程で、種類のちがう労働生産物がおたがいに事実上等しく置かれ、したがってまた、事実上商品に転化される ~
→ 第1部『資本論』の形態学と資本の生態系について(1)はコチラ
1. はじめに
2. 生態学の基礎と形態学について・・・★生態学の基礎、★形態学
3. 生態系について・・・『資本論』第1章から第3章への飛躍を目指して・・・
・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~
文献資料201 『資本論』の引用と『経済学批判』 2018.05.30 更新
<コラム20> 『資本論』と『経済学批判』の関連性について (1)
1. 『資本論』に引用された『経済学批判』の当該箇所・・・継続作業・・・
2. 『経済学批判』と『資本論』 第2版 対比表
3. 『経済学批判』 第1章 商品 本文
4. 『資本論』 第1版 第1章 商品 ・・・関連研究・・・ 2018.05.30 第1回
1. 交換価値の実体と使用価値の捨象
2. 労働が、対象化され、物質化されている
◆ ◆ ◆ ◆
2018資本論入門5月号 -1- 更新日:218.05.28
『資本論』の形態学 W-G-W と資本の生態系 G-W-G´ について(1)
第1部. 『資本論』の形態学W-G-Wと資本の生態系G-W-G´について
1. はじめに
2. 生態学の基礎と形態学について・・・★生態学の基礎、★形態学
3. 生態系について・・・『資本論』第1章から第3章への飛躍を目指して・・・
4. 『資本論』の形態学W-G-Wと資本の生態系G-W-G´について
第2部. 『資本論』第3章 「商品の変態 Die Metamorphose der Waren 」
1. ★ゲーテ形態学の「変態」について・・・
ゲーテ形態学とメタモルフォーゼ ( Metamorphose:変態 )
2. 第1章、2章と第3章の「つながり」について
3. 第3章貨幣または商品流通 ★第2節 a 商品の変態
・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~
『資本論』生誕150周年 ヘーゲルからマルクスへ -(4)-
2018資本論入門4月号-3
<コラム19> 『資本論』の翻訳問題 3 ー 資本論のヘーゲル哲学 -
◆ ヘーゲル論理学(『小論理学』)から、実体と形式の関係について調査・探究します。
第2部本質論, C 現実性, a 実体性の相関
<150> 必然的なものは自己のうちで全体的な相関Verhältnisである。 すなわち、相関が同時に自己を揚棄して絶対的な同一となる過程である。 その直接的な形式において、実体性と偶有性との相関である。この相関の絶対的自己同一は実体Substanzそのものである。実体は必然性であるから、こうした内面性の形式の否定であり、したがって自己を現実性として定立する。しかしそれは同時にまたこうした外面性の否定であって、この面からすれば、直接的なものとしての現実は偶有的なもの〔実体が偶然的な姿で現象するもの〕にすぎない。そして偶有的なものは、こうした単なる可能性であるために、他の現実へ移っていく。この推移が形式活動としての実体的同一性である。
◆ ◆ ◆ ◆
『資本論』生誕150周年 ヘーゲルからマルクスへ -(3)-
2018資本論入門4月号-2
・資本論のヘーゲル哲学・・・「貨幣形態の発生」を証明する
「マルクスは、ヘーゲルの論理学の皮をむいて、この領域におけるヘーゲルの真の諸発見を包有している核をとりだし、かつ弁証法的方法からその観念論的外被をはぎとって、それを思想の展開の唯一のただしい形態となる簡明な姿につくりあげる、という仕事をひきうけえた唯一の人であったし、また唯一の人である。」 (エンゲルス『経済学批判』について)
―〔 『資本論』理解に不可欠なヘーゲル弁証法の手引き書の役割を果たしていると言えます。〕―
「ヘーゲルの考えかたを他のすべての哲学者のそれから特徴づけるものは、その基礎によこたわる偉大な歴史的精神であった。・・・彼は歴史のうちに一つの発展を、一つの内的関連を立証しようとこころみた最初の人であって、彼の歴史哲学のうち多くのものが今日われわれにどんなに奇妙におもわれようと、根本的見解自体の壮大さは今日でもなお驚嘆にあたいする」 ・・・(エンゲルス『経済学批判』について)・・・
◆ ◆ ◆ ◆
『資本論』生誕150周年 『経済学批判』 から 『資本論』 へ
2018資本論入門4月号-1 『経済学批判』についての手紙 (1858年4月2日)
1. ◆マルクスからエンゲルスへ
資本論ワールド 編集部 まえがき
エンゲルス宛てのマルクスの手紙は、『経済学批判』の公刊(1859年)直前に書かれていますが、“価値概念”に関して大変興味深いものがあります。編集部では、この①“手紙” と ②『経済学批判』A商品分析の歴史、そして ③エンゲルスの書評 “『経済学批判』について”の相互関係を研究した結果、次のような問題に達しました。・・・・
2. 『経済学批判』 A 商品分析の歴史 と
3. 「古典派経済学に対する」 『資本論』(注31)、(注32)について
◆ ◆ ◆ ◆
『資本論』生誕150周年 ヘーゲルからマルクスへ (1)
<コラム18-1> 宇野“蒸留法”批判について 2018.04.06
資本論ワールド編集部 まえがき
ベーム・バ-ヴェルク以来、マルクスの方法論が“蒸留法”であるとして批判の対象となっています。
日本でこれを取り上げて系統的に批判・解説した学者が宇野弘蔵でした。
宇野の論点は、「労働生産物からその使用価値を捨象して、抽象的人間労働を価値の実体として把握する方法」が“マルクスの蒸留法”であると批判しています。この論点を検証してみましょう。
◆ ◆ ◆ ◆
<コラム18-2> 『資本論』生誕150周年 ヘーゲルからマルクスへ (2)
『資本論の哲学』は、『資本論』の“難点”を要領よく摘出しています。“何が問題となっているか”、当時の論争を手際よく整理してありますので、じっくりと探求してゆく素材として現在にいたるまで伝承されています。
今回は、“蒸留法”とあだ名された「使用価値の抽象・捨象」に焦点をあてて、「ヘーゲルからマルクスへ」解読してゆきます。 また、第2部では、(1)ヘーゲル哲学、(2)コリン・レンフルー著 『先史時代と心の進化』 に手助けしていただきながら、探索してゆきます。
・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~
2018資本論入門 3月号-3
『資本論』生誕150周年 『経済学批判』から『資本論』へ
・・・マルクスからエンゲルスへの手紙・・・
価値。 純粋に労働量に還元される。労働の尺度としての時間。 使用価値は―主観的に労働のusefullness《有用性》として考察されるにせよ、または、客観的に生産物の utility《効用》として考察されるにせよ―ここではただ、さしあたりまったく 経済的形態規定のそとにある、価値の“素材”的前提としてあらわれるにすぎない。価値としての価値は、労働そのもののほかになんの「 素材Stoff 」ももっていない。価値のこういう規定は、ペティではじめて暗示的にあらわれ、リカアドでは純粋に仕上げられているのだが、ただブルジョア的富のもっとも抽象的な形態であるにすぎない。・・・ (「手紙」1858年4月2日)
◆ ◆ ◆ ◆
2018資本論入門 3月号-2<column17>
『資本論』生誕150周年 ダーウィン進化論とマルクス(2)
<コラム17> ダーウィン進化論と「分業とマニュファクチャ」
~社会的人間の生産的器官の形成史~
『資本論』第12章、13章に引用されている(注31)(注89)のダーウィン進化論を探索してゆきます。「社会的生産有機体-社会的人間の生産的器官」が、第3章商品と貨幣流通、第2節商品の変態を通して「自然史と人類史」の結束点となり、ダーウィン進化論に接続してゆきます。さらに、「商品の物神的性格」の「特殊の各社会組織の物質的基礎の形成史」を究明してゆくキーワードの役割を担っているのです。
◆ ◆ ◆ ◆
2018資本論入門 3月号-1
『資本論』生誕150周年 名著探訪 ダーウィンとマルクス(1)
・・・
― シリーズ 「 『資本論』の形態学W-G-Wと生態系G-W-G´ 」 序 論
ダーウィンとマルクスのアルプス越え、幹線ルートの交差点 ―
◆ 目 次
資本論ワールド編集部 はじめに
Ⅰ. 『資本論』 登山ルートの道標
Ⅱ. 科学史の「ダーウィンとマルクス」
松永俊男著 『ダーウィンをめぐる人々』
第1部 ダーウィン進化論について
第2部 ダーウィンに直接、間接にかかわった24人の人々
Ⅰ. 万物の進化を唱えた社会学者 ハーバード・スペンサー
Ⅱ. ダーウィン=マルクス書簡の伝説
第3部 『資本論』生誕150周年 資本論入門5月号への序奏
ゲーテ形態学から「商品の変態」へ ・・・
「流通G-W-Gにおいては、両者、すなわち、商品と貨幣とは、ただ価値そのもののちがった存在様式としてのみ機能し、貨幣はその一般的の存在様式として、商品はその特別の、いわばただ仮装した存在様式としてのみ機能する。」(第4章貨幣の資本への転化・岩波文庫p.268-269)
・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~
2018資本論入門 2月号-2
『資本論』生誕150周年 アダム・スミスからマルクスへ
『資本論』の社会的分業とヘーゲル市民社会の「労働の分割(分業)」
ヘーゲル『法の哲学』 第2章市民社会 A 欲求の体系、b 労働の仕方 §198 〔-抽象的労働-〕 ところで労働における普遍的で客観的な面は、それが抽象化してゆくことにある。この抽象化は手段と欲求との種別化をひきおこすとともに、生産をも同じく種別化して、労働の分割die Teilung der Arbeiten(分業)を生み出す。個々人の労働活動はこの分割によっていっそう単純になり、単純になることによって個々人の抽象的労働abstrakten Arbeitにおける技能も、彼の生産量も、いっそう増大する。 同時に技能と手段とのこの抽象化は、他のもろもろの欲求を満足させるための人間の依存関係と相互関係とを余すところなく完成し、これらの関係をまったくの必然性にする。生産活動の抽象化Die Abstraktion des Produzierensは、労働活動をさらにますます機械的にし、こうしてついに人間を労働活動から解除して機械をして人間の代わりをさせることを可能にする。 資本論ワールド編集部 はじめに 2018資本論入門2月号-1. において、「アダム・スミスは、分業の発展の成果によって、私的所有が純化すればするだけ、それだけ、社会的生産は発展するという見方でとらえた」(内田義彦『経済学史講義』)ことを紹介しました。 このアダム・スミスの「理論的中核-要石keystone-」が、ヘーゲルからマルクスへと継承され、これを跡づけることが「資本論入門2月号-2」の課題です。ヘーゲルもマルクスも大変興味深く、分業の進展が及ぼす「社会の深層変化」を描いています。じっくりとお楽しみください。 |
◆ ◆ ◆ ◆
2018資本論入門 2月号-1
『資本論』生誕150周年 アダム・スミスからマルクスへ
資本論ワールド編集部 はじめに
1月号に続いて、内田義彦さんの「経済学史」を探究してゆきます。半世紀以上も前の論文ですが、今日なお拝聴すべき画期的作品と言えます。
私たちが特に注目しているのは、「アダム・スミスは、分業の発展の成果によって、私的所有が純化すればするだけ、それだけ、社会的生産は発展するという見方でとらえた」ことを強調していることです。
マルクスが古典派をくつがえそうとした理論的中核ー要石keystone-がここにあります。
アダム・スミスなど古典派経済学と対比することで、『資本論』第1章が始まります。
内田義彦 『経済学史講義』 未来社 1961年発行
〔アダム・スミス・古典派経済学とマルクスの経済学との対比〕
・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~
2018年 1月 新着情報
『資本論』生誕150周年 アダム・スミスからマルクスへ
◆ 1月号
<コラム15>
『国富論』における市民社会の概念と分析視角
・・・内田義彦著 『経済学の誕生』
明けましておめでとうございます
資本論ワールドは、3回目のお正月を迎えました。これもひとえに探検隊の皆さんの冒険心とお力添えの賜物と感謝申し上げます。
昨年末に、大内兵衛解題による「アダム・スミスからマルクスへ」お歳暮をお届けしましたが、ご賞味はいかがでしたでしょうか?
つづく<コラム15>は、暦も改まりまして内田義彦さん(1913年- 1989年)に新年のご挨拶をいただきます。内田さんは、1953年(40歳)に『経済学の誕生』、61年に『経済学史講義』を公刊しました。ちょうど、小林昇さんと同時代に活躍された経済学者でした。
内田さんは、アダム・スミス経済学を端的に指摘しています。
「アダム・スミスの『国富論』は、いわゆる市民社会が、どういう機構をもち、どういう法則あるいは力学にしたがって動いているかを、その基礎たる物質的生活の生産=再生産の根本にさかのぼって、はじめて科学的に、しかも、その総体において分析することを企図したものといわれている。」
「・・・労働する人たち、・・・かれらは、その共同社会のなかの他のすべての人々がぜいたくをするための原料を提供して、いわば人間社会の全組織をその双肩にになっているにもかかわらず、その重荷によってどん底におしひしがれて、建物の一番下積に忘れさられているのである。これほど抑圧的な不平等のただなかで、文明社会の最下層の、もっともさげすまれている人たちでさえ、もっとも尊敬されもっとも活動的な野蛮人が到達しうるよりも、すぐれた豊富さと潤沢さとを、ふつうに享受している事実を、どう説明したらよいであろうか。」
「こう自問して直ちにスミスは、分業による生産力の増大をもってこれにこたえ、例の有名なピン・マニュファクチュアの例をもちだし、それは『国富論』の叙述に発展してゆくのであるが、以上に引用した興味ふかい叙述のなかに、ぼくは、スミスの市民社会観と、分業論を枢軸とする『国富論』体系の分析視角が、あざやかに浮かびでているのをみるのである。」(『経済学の誕生』)
アダム・スミスと向き合うマルクスは、古典派経済学の岩盤をどう乗り越えてゆくのでしょうか?
『資本論』生誕150周年を記念して、大内兵衛さんともども「アダム・スミスからカール・マルクスへ」、内田さんにご教示をお願いしながら“新年の幕開け”です。
編集部一同より、今年もご指導・ご鞭撻を心よりお願い申し上げます。
2018年1月14日
<コラム14・15>マルクスによる「スミス批判」について以下のように焦点をしぼってゆきます。
(1) スミス「労働価値説」に対して、マルクスが行っている「価値概念」の変革
(2) 『資本論』第1章は、スミス経済学からマルクス経済学への継承・移行文脈であること
(3) 第1章第1節「使用価値の抽象・・・」は、アダム・スミスからの継承・移行文脈の結束点
こうした観点を念頭におきながら、1月新着情報と併せて企画しました。
・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~
2017年 新着情報
◆ 12月号 『資本論』生誕150周年 アダム・スミスからマルクスへ
<コラム14> ・ アダム・スミス 『諸国民の富』 解題 大内兵衛 1969年
〔 『諸国民の富』と『資本論』について 〕
資本論ワールド編集委員会
はじめに
『諸国民の富』の翻訳者である大内兵衛は、その解題のなかでスミスとマルクスの関係について大変興味深い一文を挿入しています。これまであまり注目されてはいませんが、『資本論』のルーツとも思える、意味深長な文脈となっています。
「またマルクスも彼の経済学の全体系とくに『資本論』をあげてスミス批判をやっているといっていいが、・・・・ この『諸国民の富』の解剖にあて、これによりマルクスは彼の剰余価値説とスミスの労働価値説との異同、 生産的労働と不生産的労働の区別についてスミス説の批評により彼の剰余価値論を展開している。
このようにして、いわゆる近代経済学にしても、マルクス主義経済学にしても、その源泉にさかのぼってひろく深くその思想を展開するものはスミスにさかのぼらなくてはならないのである。」
編集部では、マルクスによる「スミス批判」について以下のように焦点をしぼってゆきます。
(1) スミス「労働価値説」に対して、マルクスが行っている「価値概念」の変革
(2) 『資本論』第1章は、スミス経済学からマルクス経済学への継承・移行文脈であること
(3) 第1章第1節「使用価値の抽象・・・」は、継承・移行文脈の結束点
こうした観点を念頭におきながら、以下「大内解題」から入門してゆきいたいと企画しました。そして、今後の「新着情報」に注目していただければ幸いです。
なお、『諸国民の富』抄録についてはこちらをクリックしてください。
では、来年も資本論ワールドの探検旅行でお会いしましょう!! (2017.12.25)
→ アダム・スミス『諸国民の富』
Ⅰ. 分業について
Ⅱ. 分業をひきおこす原理について
Ⅲ. 貨幣の起源および使用について
Ⅳ. 価値の二つの意味、「使用価値」と「交換価値」
Ⅴ. 商品の実質価格-労働価格 と 名目価格-、貨幣価格について
「使用価値の抽象化」に関する
→ アダム・スミスの「商品価値」とマルクスによる価値概念の変革
・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~ ・・・・~
◆ 資本論入門11月号 特集
マルクスによる「使用価値からの抽象・分析法」を、“蒸留法”と解釈する「批判」が後を絶ちません。
さらにこの「批判」を言い訳にした『資本論』の改変が横行しています。 実証研究なき疑似科学の流行に対して、学問のあり方を根底から構築し直す時代に至っています。現在、8月・9月・10月の特集 “蒸留法”批判の関連論文・資料を一括して統合・収録する作業を進めています。これにより、“蒸留法”の問題点を簡潔・明瞭に論点整理が行われる予定です。
マルクスとともに、「学問の急峻な山路をよじ登るのに疲労困憊をいとわない者だけが、輝かしい絶頂をきわめる希望をもつ」ことを念願しています。探検隊の皆さん、あと一歩です。 (・・10月15日現在・・)
→ 「交換価値は、使用価値の社会的な性質規定性として、
・・・〔『経済学批判』交換価値の抄録〕・・・
「 すなわち、これらの物としての使用価値に与えられる規定性として表われる。そしてこの性質規定性のために、これらの使用価値は交換過程で、ちょうど単純な化学的元素が一定の量的比率で化合し、化学的等価をなしているように、一定の量的比率で置き換えられ、等価:Äquivalent をなしている。」
(『経済学批判』第1章)
1. 「使用価値の抽象化」のルーツ^p
→ 『経済学批判』 の 「交換価値」分析 -「労働は富の父であり、土地はその母である」
2. → コリン・レンフルーと「商品の物神性」
・・・“蒸留法”受容の日本的・歴史的背景ー未成熟な「物神性」論の帰結ー
価値表現の構造分析・物神性 | |||||
10月号-1 | ◆価値形態と形式Formの二重性(4) | <コラム18-1> | ・宇野弘蔵ー“蒸留法”批判について | ||
10月号-2 | ・ヘーゲル『大論理学』本質論 仮象 | <コラム18-2> | ・廣松渉著『資本論の哲学』について | ||
10月号-3 | ■資本論の物神性について(1) | 3月号-1 | <コラム16> 松永俊男著 ・ 『ダーウィンをめぐる人々』 |
||
<コラム22> | ■『資本論』の膠状物Gallertについて(1) | 3月号-2 | <コラム17>ダーウィン進化論と ・ 「資本論の分業とマニュファクチャ」 |
||
9月号 | ◆価値形態と形式Formの二重性(3) | 3月号-3 | ・エンゲルス著 『経済学批判』について | ||
8月号 | ◆価値形態と形式Formの二重性(2) | 2月号-1 | ・内田義彦著 『経済学史講義』について | ||
7月号 | ◆価値形態と形式Formの二重性(1) | 2月号-2 | ・資本論の社会的分業とヘーゲル ・ 市民社会の「労働の分割(分業) |
||
<コラム21> | ・人類学・考古学ファイル | 1月号 | <コラム15>内田義彦 『経済学の誕生』 | ||
6月号 | ・『資本論』交換過程と価値形態の形成 | ◆ 2017年 | |||
5月号 | ■形態学W-G-Wと資本の生態系G-W-G´(1) | 12月号 | <コラム14>大内兵衛解題 『諸国民の富』 | ||
<コラム20> | ・『資本論』と『経済学批判』の関連性 | 11月号-1 | ・価値分析に対する“蒸留法”批判について | ||
4月号-1 | ・マルクスの手紙・『経済学批判』 | 11月号-2 | “もし商品体の使用価値を無視するとすれば” ~『経済学批判』の使用価値~ |
||
4月号-2 | ・『資本論』 貨幣形態の発生証明 | 11月号-3 | ◆コリン・レンフルーと「商品の物神性」 | ||
<コラム19> | ・『資本論』の実体と形式について |