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貨幣とは何か? 
交流会 2016年6月1日


          (商品の「価値形態」について)


はじめに
資本論ワールド編集委員会では、「貨幣とは何か?交流会」と題して、新たに連載を行ってゆきます。
『資本論』第3節価値形態または交換価値を中心としながら、現代的なテーマも取り上げ、
いろいろな角度から貨幣問題について、参加者と意見交換・交流会を行ってゆきます。



 
司会進行役を務めます坂井と申します。
『資本論』とのお付き合いは、10年ほどになりますが、なかなか前に進めなくて、行ったり来たりの
連続です。今回皆さんと「貨幣とは何か?」をテーマに研究会に参加できて、大変楽しみにしています。
第1回目ですので、皆さんが日頃感じている問題意識から始めてゆきたいと思います。
どなたからでも、結構ですので気楽に発言をお願いします。

 
北部資本論研の福士です。
毎月1回、『資本論』の学習会を行ってきています。やっと2年目に入り、第1章を終了(?)、
読み終えたところです。解らないところだらけでした。足手まといにならないように努力しますが、
とんちんかんな質問が多々ありますが、新米ですのでよろしくお願いします。

 食品会社に勤めています浜田と申します。
子育て真っ最中で、毎回出席できるかわかりませんが、勉強して「お金」持ちになって幸せになれるよう
に期待しています。『資本論』は学生時代にちょっと読んだきりです。

 
大学で教員をしています金子です。
経済学の講座を受け持っていますが、学生からいろいろな質問が出され、対応に苦慮する連続です。
学生の『資本論』サークルに参加していますので、この研究会の成果を持ち帰ってゆければ幸いです。
皆さんと勉強ができるのが楽しみです。

 
事務局の小島です。
資本論ワールドの編集委員会で、事務局を担当しています。皆さんとの日程や議事次第の連絡調整役を
受け持っています。お世話になりますのでよろしくお願いします。

 坂井司会:
本日は急用のため、欠席ですが、哲学方面の研究をしています近藤さんが次回から出席される予定です。
では本日のレジメを参考にしながら、進行させていただきます。

 第1回 
貨幣とは何か?」 交流会 2016年6月1日

Ⅰ. 貨幣の起源について、 ~参考資料:貨幣理論の歴史
          
6/12追加資料 古代メソポタミア文明・貨幣性商品の考古学  
Ⅱ. 『資本論』の「貨幣」について       
  <関連テーマ>
Ⅲ. 現代の「貨幣」(管理通貨制度)について          
Ⅳ. 円、ドル、元などの通貨について

 
第1章 貨幣の「起源」と第3節価値形態の話題性
Ⅰ.古代メソポタミアの「貨幣の起源」について


では、金子先生から、報告していただきます。

金子講師:
では、貨幣の起源について、古代メソポタミアを例にして報告します。
1. 古代メソポタミア、イラクを中心にユーフラテス河とティグリス河に挟まれた地域(メソポタミアとは
“川の間”を意味するギリシャ語)は古代文明の発祥地として知られています。
西アジア一帯で経済交易が盛んになります。両河 の上流の山岳地帯では、豚、ヒツジやヤギの牧畜が盛んでした。
一方、下流の南部ではオオムギ・コムギの栽培が開始されます。今から9000年前あたりです。
ウバイド文化からシュメール都市文明へと引き継がれてゆきます。世界最古の文字、楔形文書が17世紀ごろに
ヨーロッパの旅行者によって発見され、以来20世紀、そして今日に至るまで発掘が進んでいます。


2.
 貨幣の起源との関連で特徴的なことは、物資の管理文書(絵文字から楔形文字)とトークンと言われ
る物資管理用の計算道具が大量に発掘されたことです。5000年前には穀物栽培や家畜の飼育を専門に
行う業者が出現して、業務の委託を受ける人々と委託する村の有力者との間で「委託業務の契約内容」を
明示しておくための用具としても発達しました。
両河の上下を行き来する物資(金、銀、銅、黒曜石、木材などの金属鉱物や)の流通や交易活動が盛んに
行なわれています。よく話題になる「物々交換」の始まりです。

3. ただ、ここで検討する必要事項は、物々交換から貨幣機能を果たす物財への移行はいつごろ、どのよう
にして始まったのか、ということです。この点に関してはまだ多様な意見が出されていて、定説がないようです。

4. 大事なことは、この貨幣機能の出現について、『資本論』の「商品と貨幣」がどのように展開するか、
 一緒に考えてゆくことではないでしょうか。このほうが、ずっとリアリティをもって議論が深まってゆくと思います。


北部資本論研福士:

最近の研究では、銀の流通が西アジアの広域にまたがって行われたようです。5000年以上も前から
遠隔地交易で、西はトルコから黒曜石など、東はイランを越えてアフガニスタンからラピスラズリなどの
貴重な宝石類がさかんに両河で運ばれています。
 現代の国際貿易と比べても、見劣りしないほど活発だったようです。

坂井司会:
確かにそうだと思います。文明の誕生ともいわれる古代オリエント世界では、活発な商業活動があったようです。
最近の考古学の成果を吸収しながら、私たちの『資本論』交流会に反映できれば賑やかなって楽しみですね。
その反面、この第3節「価値形態」は抽象的な議論ばかりで退屈になるようです。金子さんのご指摘のように、
歴史上の「貨幣機能の出現」と並行しながら議論するほうが、理解しやすいですね。

毎回、「貨幣理論の歴史」を付属資料で添付しておきます。第1回は、アダム・スミスの「分業と貨幣」論です。
それでは、事務局の小島さんから報告を受けてから、検討会に入ります。



第2章 商品と価格について

小島事務局:

では『資本論』の貨幣を中心にしながら、第3節の価値形態または交換価値を紹介します。
この第1章第3節は、商品から貨幣が形成されてくる論理の展開過程が説明してあります。残念なことに
非常に難しい、と言われています。
その一方で、マルクスは、「
歴史的に初めて貨幣形態の発生を証明した」と自信満々に述べていますので、
まずこの様子を紹介します。第3節の始まりの個所です。

(1) 商品は使用価値または商品体の形態で、すなわち、鉄・亜麻布・小麦等々のとして、生まれてくる。
これが彼らの生まれたままの自然形態である。だが、これらのものが商品であるのは、ひとえに、二重なるもの
すなわち使用対象であると同時に価値保有者であるからである。したがって、これらのものは、二重形態、すなわち
自然形態と価値形態をもつかぎりにおいてのみ、商品として現われ、あるいは商品の形態をもつのである。

(2) 人は、何はともあれ、これだけは知っている、すなわち、諸商品は、その使用価値の雑多な自然
形態と極度に顕著な対照をなしているある共通の価値形態をもっているということである。― すなわち、
貨幣形態である。だが、ここでは、いまだかつてブルジョア経済学によって試みられたことのない一事をなしとげよう
というのである。すなわち、この貨幣形態の発生を証明するということ、したがって、商品の価値関係に含まれている
価値表現が、どうしてもっとも単純なもっとも目立たぬ態容から、そのきらきらした貨幣形態に発展していったかを
追求するということである。これをもって、同時に貨幣の謎は消え失せる。

 
序文に続いて、多様な価値形態について分析が続きます。
 A 単純な、個別的な、または偶然的な価値形態
 B 総体的または拡大せる価値形態
 C 一般的価値形態
 D 貨幣形態

 となっています。


坂井司会:

 AからDへと順にやってたどってもいいですが、最初にポイントとなるような、
 重要な個所から討議を開始したほうが良いのではないでしょうか?

金子講師:
 学生からよく意見、感想が出るのは、読み進んでいくにつれて、「同じような話しが出てきて自分が今どの
個所を読んでいるのか、解らなくなる」というのが多くあります。ですから司会者の提案が良いと思います。

北部資本論研福士:
 同感です。うちの資本論研でも話題があちこち飛んでしまって、いつも焦点が拡散してしまい、まとまらない。
 そこで提案ですが、Cの一般的価値形態を中心にして始めたら理解しやすいと思いますが。

坂井司会:
それはグッドアイデアですね。
では、Cから始めますが、その前に事務局から紹介された最初の
(1)(2)について検討をお願いします


浜田会社員:
会社で、経理の仕事をしていますが、工場・総務から納品伝票が回ってきて伝票仕分けから始まります。
経理からみる商品には、商品名・単価・仕入数量、会社の掛け率50%を単価に掛けて販売価格を計上します。
3000円で仕入れたとすると、3000円×50%=1500円+仕入の3000円=4500円の販売価格です。
 経理からすると、商品とは販売価格を決める一連の作業を伴うものが商品だと思います。

金子講師:
いや、大変面白い意見ですね。
値段付けを伴うものが商品ですか。これはいい。

北部資本論研福士:
浜田さんの言うのは、「商品は価格をもって市場や店頭に生まれてくる」ということですよね。
先ほどの
(1)でいう、「商品であるのは二重形態、使用対象と同時に価値保有者」、すなわち価格とい
うことですか。

坂井司会:
後段
(2)にある「商品は使用価値の雑多な自然形態とある共通の価値形態すなわち
貨幣形態をもっている」ことですね。

浜田会社員
価値形態」という言葉の使い方、意味がよく分からないのですが。価値関係と、どう違うのでしょうか?

金子講師:
(2)
の後段にある、「商品の価値関係に含まれている価値表現が、どうしてもっとも単純な目立たぬ態容から、
そのきらきらした貨幣形態に発展していったかを追求することである」とあります。
一般的に「
形態」には、二通りの言葉の使い方がされています。物の姿、形などのことで、例えば新しい自動車が
出て、「今度の新車のボディラインは、今までにない全く新しい設計思想によるタイプの形態だ」とか言う場合。
もう一つは、生物学の分野で、生物の体制を比較研究する比較形態学などでよく使われています。
ここの「
価値形態」という場合の「形態」は、商品の価値表現、例えば、小麦10kg 3000円のように小麦の価値が
価格として表わされる方式、形式のことと考えると理解しやすいのではないでしょうか。
ドイツ語や英語ではFormといって、形態、形式どちらにも使われています。

坂井司会:
今日は哲学に詳しい近藤さんが欠席ですので、後日改めて検討してゆきたいのですが、
この「Form」がどうもくせものみたいです。
ヘーゲル哲学では、「ある実体が現象するときに形作る、または
表現される時の、形式化される仕方」をFormと言う
ようです。
これは、議論が複雑になりますので、次回近藤さんからレポートを依頼しておきます。


第3章 「価値形態または交換価値」
 C 一般的価値形態について

小島事務局:

では、本文に移っていきます。
久しぶりに『資本論』を読まれた方もいらっしゃいますので、事務局から簡単に全体の流れを説明してから、
Cの一般的価値形態に入ってゆきます。
 第3節は、
 A 単純な、個別的な、または偶然的な価値形態
 B 総体的または拡大せる価値形態
 C 一般的価値形態
 D 貨幣形態
の具合に4つに大区分されています。その中で、また細かい小区分があります。

Aは、1.価値表現の両極、相対的価値形態と等価形態、2.相対的形態、3.等価形態、
    4.単純な価値形態の総体です。
Bは、1.拡大された相対的形態、2.特別な等価形態、3.総体的または拡大された価値形態の欠陥、
Cは、1.価値形態の変化した性格、2.相対的価値形態と等価形態の発展関係、
    3.一般的価値形態から貨幣形態への移行、
Dにきてやっと、貨幣形態となります。
 ただ、この中見出しに特徴がでています。「相対的」と「等価」の二つの「
形態」の関係から
 
「貨幣形態」が成立してくる見通しがあるようです。

坂井司会:
小島さん、ありがとうございます。
貨幣形態の話しが出ましたので、私からも追加したいと思います。
 D貨幣形態の最後に、AからDまで一連の形態が発展していく様子の説明があります。

貨幣形態という概念の困難は、一般的等価形態の、したがって、一般的価値形態なるものの、すなわち、
Cの第三形態の理解に限られている。
第三形態は、関係を逆にして第二形態に、すなわち、Bの拡大され
た価値形態に解消する。そしてその構成要素は
Aの第一形態である。すなわち、亜麻布20エレ=上衣1着
または A商品x量 = B商品y量 である。したがって、
Aの単純なる商品形態は貨幣形態の萌芽である。
 このように、Aの単純な、個別的な、または偶然的な価値形態が、D貨幣形態の萌芽・始まりになっている。」
と集約しています。


北部資本論研福士:
先ほどの浜田さんの質問に関連しますが、「価値形態」が「商品の価値表現、小麦10kg 3000円のように
小麦の価値が価格として表わされる方式、形式のことと考えると理解しやすい」とありました。そうすると、
小麦10kg = 3000円の価値関係が、貨幣形態すなわち価格となっているのは、
最初のA単純な価値形態である
亜麻布20エレ=上衣1着の価値表現が、発展してゆくということですね。

金子講師:
そういう理解でよいと思います。ただし面倒なのは、Cの一般的価値形態では、
上衣1着=亜麻布20エレ
具合に亜麻布と上衣が反対になっています。どうして反対になってゆくのか、これが問題かもしれません。


第4章 価値形態論について


小島事務局:

Cの一般的価値形態の話しが出てきましたので、そろそろ本題に入ります。
レジメの「第3章 価値形態または交換価値」 C を見てください。 (岩波文庫p.119)

   C 一般的価値形態

上衣1着            = 亜麻布20エレ
茶10ポンド          = 亜麻布20エレ
コーヒー40ポンド       = 亜麻布20エレ
小麦1クォーター       = 亜麻布20エレ
金2オンス           = 亜麻布20エレ    
鉄1/2トン           = 亜麻布20エレ
A商品x量           = 亜麻布20エレ
その他の商品量       = 亜麻布20エレ


1.
 価値形態の変化した性格
 
Aの第一の形態は、亜麻布20エレ=上衣1着、茶10ポンド=鉄1/2トン等々というような価値方程式を
作り出した。亜麻布価値は上衣に等しいものとして、茶価値は鉄に等しいものとして、というような風に表現される。
 
Bの第二形態(総体的、拡大せる価値形態)は、亜麻布20エレ=上衣1着 または =茶10ポンド 
または =コーヒー40ポンドのようになる。 これはある労働生産物、例えば亜麻布や家畜が一般的にすでに
習慣的に他の商品と交換されるようになると、このような拡大された価値形態が出現してくる。
一商品、亜麻布(あるいは家畜)の価値は、亜麻布(あるいは家畜)自身の使用価値からはっきりと区別されている。
いまでは商品世界の無数の他の成素に表現される。

こうして亜麻布の価値自身は、無差別な人間労働の
膠状物Gallertとして現われている。
新たな
Cの第三形態は、商品世界の諸価値を、同一なる、この商品世界から分離された商品種・亜麻布で表現している。
そしてすべての商品の価値を、その
亜麻布と等しい〔例えば、上衣1着=亜麻布20エレ〕ということで示している。

Bの拡大された価値形態がさらに前進した形態として、共通した商品世界の広がりの中で成立してくる。
こうして例えば
亜麻布が一般的価値表現を得るのは、他のすべての商品が自分の価値を同一の等価で
表現する
ようになるからである。そして新たに現われるあらゆる商品種は、これを真似るようになる。
これらの結果、諸商品の価値対象性は、全面的な社会的関係によってのみ表現されるようになる。

2.
 価値が量的に比較される大いさの成立 <亜麻布と上衣が反対の位置に入れ替わってくる>
 
亜麻布に等しいものの形態において、いまではあらゆる商品が、その価値の大いさを同一の材料で、
亜麻布で写し出すから、これらの商品の価値の大いさは、交互に反映し合うことになる。
例えば
上衣1着=亜麻布20エレ、茶10ポンド=亜麻布20エレ、コーヒー40ポンド=亜麻布20エレ。
したがって、茶10ポンド=コーヒー40ポンドというようにお互いが反映しあうことになる。


3.
 商品世界の共通な価値態容〔貨幣機能性の出現〕の成立
商品世界の一般的な相対的価値形態は、この世界から排除された等価商品である亜麻布に、一般的等価の
性質をおしつける。その結果、亜麻布自身の自然形態は、この世界の共通な価値態容であり、したがって、
亜麻布は他のすべての商品と直接に交換可能となる。
こうして、亜麻布という物体形態は、一切の人間労働の眼に見える
化身・受肉として、一般的に社会的な蛹化(
幼虫がサナギになること)としての“はたらき”をなす
ことになる。

 
以上が、Cの一般的価値形態のとして成立してゆくことになります。

坂井司会:

 長
い時間にわたっての説明ありがとうございました。
これから、事務局の報告と、あわせて質問や議論をお願いします。
ちょっと、時間も大分経過してきましたので、休憩をとりたいのですがいかがでしょうか。


浜田会社員:
大賛成です。休憩時間にちょっと調べたい事もありますので、ゆっくり時間をいただきたいです。

北部資本論研福士:
 物々交換における「貨幣性の機能」に大変興味を持ちました。
いままで「貨幣性機能の出現」という問題が見過ごされてきたように感じられ、
改めて検討する必要があるのではないでしょうか? なぜなら、今後の D・貨幣形態への移行にしても、
単に亜麻布が金に代わるだけでは済まされない問題点があるように思います。

 関連する、ひとつの議論として、現代では「金」は貨幣として使われていません。
円やドルの紙幣が流通しています。物々交換の中から、「貨幣性機能をもつ商品」が出現して、
Cの一般的価値形態が形成されるわけです。
その後に、金商品(あるいは銀商品)に落ち着いてゆくわけです。これらの歴史的経過を重ね合わせると、
現代の紙幣の流通とどこかの地点で、何かしらの共通点が見えてくるような気がするのです。

坂井司会:
お二人の意見が出されました。貴重は提案もあるようで、少し長めの休憩時間とします。
各自、再開までいままでの議論を参考にしてください。

<注>その後、浜田さんから連絡があり「調べたい事」は、古代オリエントの「商品と考古学」についてでした。
     古代オリエント史における「価値形態論の第1形態と第2形態」を中心に調査する予定です。

<注2> 本日、6月11日に浜田さんから「古代メソポタミア文明:貨幣性商品の考古学」第1回レポートが
      提出されました。大変長文ですが、掲出したましたので、ご参照ください。


・・・休憩・・・