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<コラム11>
バーボン『交易論』

   ― 商品の価値は有用性から、商品の価格は現在の価値である ―


  ニコラス・バーボン『交易論』(1690年)
 商品の価値と価格について 

  
 資本論ワールド編集部 はじめに

   マルクスは、『資本論』第2版 注2、3、7、8 において、「老バーボン」の『新貨幣をより軽く改鋳することにかんする
  論策、ロック氏の「考察」に答えて』(1696年)を載せています。また本文では、「あるいはかの老バーボンが言っている
  ように、「一つの商品種は、その交換価値が同一の大いさであるならば、他の商品とおなじだけのものである。
  このばあい同一の大いさの交換価値を有する物の間には、少しの相違または差別がない。」と引用を行っています。

   この『資本論』の中で行ったバーボンの注と引用文は、1690年のバーボン自身の『交易論』とは、矛盾した記述が
  見受けられます。すなわち、

   「同一の大いさの交換価値を有する物の間には、少しの相違または差別がない」という論点です。
   1690年と1696年との食い違いー
   1690では、 「
交易の財としての如何なる物にも、固定した価格または価値たるものはない。」
        
 ② 「人の心が変化すれば、物は有用でなくなり、したがってその価値を失う。」のであるから、
     当然に、いろいろな商品同士の交換価値の比較は、偶然であり、有用性も決まった基準を持つことができません。
   一方、1696年の『新貨幣・・・論策』では、「同一の大いさの交換価値を有する物の間には、相違または差別がない」
   ことになっています。マルクスは、この二つの間の相違点、矛盾点をとらえて、
   1696年のバーボンに対して、
皮肉を込めて」バーボンalte Barbon と呼んだものと思われます。



  
ニコラス・バーボン『交易論  東京大学出版会 1966年初版 
        
                  
交易 Trade および交易の資材 Stock ないし商品 Wares について
  
    
商品の価値と価格について (p.16)

1.  
すべての商品の価値はその有用性Useから生ずる。有用性を欠くものは。英語の言いまわしでいえば、
  それらは役にたたないThey are good for nothingから、価値をもたない。

2. 
物の有用性は人間の欲望Wantsと必要をみたすにある。人類が生まれながらにしてもっている欲望には二つの
  一般的欲望がある。身体上の欲望と精神上の欲望とがこれである。これら二つの必要をみたすうえで、地球上のすべての
  物は有用となり、従って価値をもつのである。

3.  身体上の欲望をみたすうえで
有用な商品とは、生命を維持するのに必要であると通常評価されているすべての物である。
  すなわち、
人間の一般的な三つの必要、食、衣、住をみたすうえで有用なすべての財である。

4.  精神上の欲望をみたすことによりその価値をえる商品とは、願望Desireを満足させうるようなすべての物である。
  願望は欲望を含んでいる。願望は心の食欲であり、空腹が肉体にとって自然的なのと同様に、魂にとって自然的
  なのである。

5. 〔
価格について
 
商品の価格は現在の価値である。そしてそれは、商品にたいする必要occasionsまたは需要useを、その必要に
 役立つべき〔商品の〕分量でもって計算することによって生ずる。なぜなら物の価値はその有用性に依存するので、
 使用しきれないほどに存在する商品の過剰分は無価値となるからである。
 だから
必要に比しての豊富は、物を廉価にし、希少は物を高価にする

6.  交易の財としての如何なる物にも、固定した価格または価値たるものはない。地球上の動植物は天の力に
 左右されるものであって、それは時には悪疫、飢饉、凶荒を生み、時には豊作の年を生む。
 それゆえに、物の価値はこれに従って変動せざるをえない。さらに、大抵の物の有用性は、身体の必要をではなく、
 精神上の欲望をみたすことにあり、しかもこれらの欲望も、大部分は想像より生ずるものであるから、人の心が
 変化すれば、物は有用でなくなり、したがってその価値を失う。

  以上