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         アリストテレス  形而上学
〔 成素、構成要素 : Elementarform 〕


第5巻 第3章
    〔 ギリシャ語 : ストイケイア、 ラテン語・ドイツ語 : エレメント Element 〕


 事物のストイケイオン(注1)〔構成要素、元素〕というのは、(一)当の事物が第一にそれから構成され且つこの構成された事物に内在しているところのそれ〔その事物の第一の内在的構成要素〕であって、種においてはもはや他の主に分割されえないものである。

(1)たとえば、或る音声のストイケイアというのは、その音声がそれらから構成されていて、これが分割されれば最後にはそれらに達するが、それら自らはもはやいかなる他の種の音声部分にも決して分割されえないものである。たとえさらに分割されうるとしても、その諸部分は互いに同種的である、たとえば、水のごときで、水は分割されるが、その各部分はいずれも同じ水である。しかるに、音節の部分〔すなわち字母〕はもはや音節ではない。またこれと同様に、

(2)人々が諸物体のストイケイアと言うところのものも、実は物体の分割された最後のもの、もはや種を異にする他のものには分割されえない終極のもの〔すなわち元素〕を論じているのであって、このようなものを一種類きりであるとする論者も一つより多くあるとする論者も、ともにこれらをストイケイアと呼んでいる。

なお、これと似た意味で用いられているのは、(3)幾何学的諸命題におけるいわゆるストイケイア〔幾何学のエレメンタ〕であり、また一般に論証において言われるそれもそうである。けだし、他の多くの命題のうちに含まれ〔前提され〕ているところの第一の命題は、他の諸命題のストイケイアと呼ばれるからである。

なおまた中間の一つを媒介項とする三つの項から成るところの基本的な推理〔三段論法〕についても、これと同

じようなことが言われる。


 
だがまた、(二)ここから転意されて、(4)およそそれ自らは一つであり微小でありながら他の多くの物事に有用であるところのものが、それのストイケイオン〔要素〕と呼ばれている。したがってまた一般に、微小で単純で不可分割的なものがストイケイオンと言われる。

またここからして、(5)最も普遍的なものどもが、そのいずれもそれぞれ一つであり単純であって、しかも多くの物事のうちに(すべての物事のうちに、あるいはきわめて多くの物事のうちに)内在しているがゆえに、ストイケイアであるとされ、そして或る人々の考えでは、一や点が〔そのような意味で〕原理であるとされるに至った。

ところで、(6)いわゆる類もまた、普遍的であり不可分割的であるから(というのは類には〔これをさらに分析して述語し定義すべきいっそう普遍的な〕説明方式がないから)、或る人々は類をもストイケイオンであると言っている。ことに種差よりもより以上に類の方をそうであるとしている、というのは、類の方がより多く普遍的だからである。

なぜなら、種差の内在するものには類もまたこれに伴ない存するが、しかし類の存するところに必ずしも種差が存するわけではないからである。さて、以上のすべての意味に共通する点は、各々のもののストイケイオンはそれぞれに内在するその第一のもの〔第一の内在的要素〕であるというにある。



 アリストテレス『形而上学』 翻訳者 出 隆による<注>


(注1) 「ストイケイオン」は原語ではστοιχειον(複στοιχεια)。

ラテン訳ではelementum(複elementa)。もともと言葉の音節または語節(σνλλααβη)を

構成する要素としての字母(アルファベット)を意味する語で、転じて一般に事物の構成要素を指す語。

したがって、この語は、ラテン語に移されるに当たり、一説では、a b cの代りに

1mn〔エル・エム・エヌ〕(当時のローマ字母20を2行に書き2行目の頭の3字)をとって「el-em-enのようなも

の」との意でelementumと訳されたとも言われる。

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