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資本論用語事典2021


商品生産のフェティシズムと生態系



 『資本論』 生態系_形態学について    改題 2021.03.25

  資本論の形態学W-G-Wと資本の生態系G-W-G´ 序論
 


             ・・・・関連資料・・・・
      『資本論』第3章 「
商品の変 Die Metamorphose der Waren
        1. ゲーテ形態学の「変態」について・・・
             
ゲーテ形態学とメタモルフォーゼ ( Metamorphose:変態 )

             1-2. ダーウィンの生態学について 
       2. 第1章、2章と第3章の「つながり」について
       3. 第3章貨幣または商品流通  
第2節 a 商品の変態 
       4. 生態系ってなに?
 

 

 

 『資本論』 生態系_形態学について
 
  資本論の形態学W-G-Wと資本の生態系G-W-G´ 序論
    1. はじめに
    2. 生態学の基礎と形態学について・・・生態学の基礎、形態学
   
 3. 生態系について ・生態学と形態学が融合した概念形成・
           ・・『資本論』第1章から第3章への飛躍を目指して・・
    4. 『資本論』の形態学W-G-Wと資本の生態系G-W-G´について


 
 
1. はじめに  「生態学の基礎と形態学」の経緯についてご報告いたします。

 「形態に関する学(形態学)」という日本のマルクス経済学ではあまり聞きなれない用語ですが、マルクスが活躍した時代―生物学者やドイツ古典哲学者などヨーロッパの間では一般的に使用されています。特に注目されたのは、
ゲーテが昆虫植物の「変態」論を発表し、さらにヘーゲル(ベルリン大学教授)が「形態 Gestalt」と「有機体Organismus)の概念規定を行った『エンチユクロペディ』第2篇自然哲学第3部有機的な自然学の講義を行うなど、「形態に関する学」が浸透してゆきます。フランスではサン‐シモンやコントなど、イギリスではスペンサーが社会有機体説を提唱し、(ダーウィン『種の起源』より前に「進化」説を発表した。)大々的に有機体学ー生物有機体になぞらえて社会の構造・機能を説明し、生物と構成要素の細胞との類比によって社会の分析をおこないました。マルクスは、これら形態-有機体説の伝統を受け継ぎながら、社会的生産有機体とー物質代謝そしてー社会的分業ーを展開しています。


 『資本論』では、第3章貨幣または商品流通、第2節の「商品の変態Die Metamorphose der Warenで「形態-有機体説」の議論を行っています。そもそも、この「商品の変態という表題自体がゲーテ形態学からの伝統を受け継いでいるわけでして、『資本論』(第3章第2節)の本題に入る前に「形態-有機体説」から説明しなければならない込み入った事情によるものです。マルクスがドイツ人で、ゲーテやヘーゲルの伝統文化に育まれてきただけに、避けて通るわけにはいきません。実はこのドイツ語の「変態:Metamorphoseメタモルフォーゼ」自体が、ゲーテによって「動物や植物」に適用されたのであり、マルクスにより「商品」の“変態”に採用した“科学言語”を示す概念規定なのです。



 2. 生態学の基礎から形態学について

 最初に全体のイメージをつかむために、科学史家のシンガーから「生態学の基礎」(『科学思想のあゆみ』)と岩波思想・哲学辞典から「生態学」(解説:廣野喜幸)と「形態学」(解説:高橋義人)を報告します。高橋さんについては、後のゲーテ形態学でも登場しますので、記憶しておいてください。なお、
解説の詳細は、こちらを参照してください。


 
2-1. 生態学の基礎 ・・・シンガー 『科学思想のあゆみ』 岩波書店p.454~458

  18世紀の後半にはいり、
西洋では生命現象について植物や動物の実験と観察化学者の間で行なわれるようになります。イギリスではジョセフ・プリーストリー、フランスではラヴォアジェによってそれぞれ動植物の呼吸作用について実験が行なわれています。解剖学者のジョン・ハンターは、多様な生命体のいろいろな相違性の底に横たわる一般原理を求めて、「生命は構造〔形態〕とは独立であって、すべての有機体が含有しているある物質の一つの属性であるにちがいない」という思想に到達しました。ここから、生命の共通な物質的基礎の概念-「原形質」-の入り口に立っていました。
 19世紀にはいり、ドイツのリービッヒは、ヴェーラーとともに生体内の化学的変化を実験的に証明してゆきます。生命過程の化学的説明の進展から、
自然における「循環」の概念、生命の原動力が太陽エネルギーに発するなど今日の科学的基礎の土台が形成されてゆきます。1837年、フランスの実験家デュトロシェは植物細胞の機能として酸素を放出し、緑色物質を含む細胞だけが二酸化炭素を吸収する能力があることを証明しました。

 「生態学」の用語自体は、1866年にドイツの生物学者エルンスト・ヘッケルによって造語されました。英語のエコロジーecologyは、Ökologieというドイツ語の英語表記で、ヘッケルによれば、古代ギリシアの住居と生業の家を意味するギリシア語のオイコスoikosと学問・論理を意味するロゴスlogosという語を合成してつくったと言われています。


  ★参照資料

   → Ch・シンガー 『科学思想のあゆみ』 岩波書店
   →岩波思想・哲学辞典から「生態学」(解説:廣野喜幸)


 2-2. 生態学から有機体学への発展

 
 「2-1」で述べてきたように、生態学の歴史は18世紀にさかのぼりますが、並行して「有機体」概念が生長してきます。生物の器官Organから、器質形成、組織化などを経て動物有機体などと「
有機体 Organismus」が形成されてきます。「近代科学の機械論的自然観に対立する、有機体的自然観の系譜は、ルネサンスの魔術的自然観や能産的自然(natura naturans)の思想に発するが、この流れを活性化したのはゲーテの形態学である」と言われています。
  →(有機体(論)岩波思想・哲学辞典 解説:新田義弘)。


 
この間の科学史を特徴づけるかのように、『資本論』ではつぎのように「有機体と形態変化」について述べています。


 (1)肉体的有機体 leiblichen Organismus
 「この労働は、すべての普通の人間が特別の発達もなく、平均してその肉体的有機体〔leiblichen Organismus〕の中にもっている単純な労働力の支出である。単純な平均労働自身は、国のことなるにしたがい、また文化時代のことなるにしたがって、その性格を変ずるのであるが、現にある一定の社会内においては与えられている。」(第1章第2節商品に表された労働の二重性・岩波文庫p.83)


 (2)人間有機体 menschlichen Organismus
 「
だから、商品の物神的性質はその使用価値から出てくるものではない。それは、同じように価値規定の内容から出てくるものでもない。なぜかというに、第一に、有用な労働または生産的な活動がどんなにいろいろあるにしても、これが人間有機体〔menschlichen Organismus〕の機能であり、かかる機能のおのおのが、その内容その形態の如何にかかわらず、本質的に人間の脳髄と神経と筋肉と感覚器官等の支出であるということは、生理学的真理であるからである。」(第4節 商品の物神的性格とその秘密・同p.130)

 (3) 社会的生産産有機体 gesellschaftlichen Produktionsorganismus
 「
最後にわれわれは、目先を変えて、自由な人間の一つの協力体を考えてみよう。人々は、共同の生産手段をもって労働し、彼らの多くの個人的労働力を、意識して一つの社会的労働力として支出する。・・・ この生産物の一部は、再び生産手段として用いられる。・・・他の部分は生活手段として、協力体の成員によって費消される。したがって、この部分は彼らの間に分配されなければならぬ。この分配の様式は、社会的生産有機体〔gesellschaftlichen Produktionsorganismus〕の特別な様式とともに、またこれに相応する生産者の歴史的発展の高さとともに、変化するであろう。」(第4節 商品の物神的性格とその秘密・同p.141-142)

 (4)自然発生的生産有機体 naturwüchsiger Produktionorganismus


 「商品は、とくに貨幣所有者にたいして使用価値でなければならない。すなわち、この商品にたいして支出された労働は、かくて社会的に有用なる形態で支出されていなければならない。あるいは社会的分業の一環たることを立証しなければならない。しかしながら、分業は、自然発生的生産有機体〔naturwüchsiger Produktionorganismus〕をなしているのであって、その繊維は商品所有者の背後で織られたのであり、またつづいて織られているのである。」(第3章 貨幣または商品流通 a 商品の変態・同p.189)


 (5)交換過程→商品の形態変化Formwechsel-社会的物質代謝Stoffwechsel商品の変態


 「交換過程は、諸商品を、それが非使用価値である持ち手から、使用価値となる持ち手に移すかぎり、
社会的な物質代謝である。ある有用な労働様式の生産物が、他のそれとかわる。商品は一たび使用価値として用いられる個所に達すると、商品交換の部面から消費の部面にはいる。ここでわれわれの関心事となるのは、前の方の部面のみである。したがって、われわれは全過程を、その 形式的側面 Formseite から、したがって、ただ商品の形態変化Formwechselまたは社会的物質代謝gesellschaftliche Stoffwechsel 〔素材転換〕を媒介する、その変態 Metamorphose der Warenをのみ、考察しなければならぬ」(第3章 貨幣または商品流通 a 商品の変態・
同p.185)


 
(6) 分業体制と社会的生産有機体


 「
分業体制の中に
、その肢体(membra disjecta)が八方に分岐していることを示している社会的生産有機体の量的構成は、質的なそれと同じように、自然発生的で偶然的である。したがって、わが商品所有者は、彼らを独立の私的生産者となす同じ分業が、社会的生産過程とこの過程における彼らの関係を、彼ら自身から独立のものとしていること、人々相互の独立性が、全般的な物的依存の体制となって補足されているということを、発見するのである
 
分業は、労働生産物を商品に転化する。そしてこのことによって、労働生産物の貨幣への転化を必然的にする。
この分業は同時に、この化体〔Transsubstantiation〕が成就するかどうかを、偶然的のものにする。」(第3章 貨幣または商品流通 a 商品の変態・同p.191)



 
以上のように有機体と形態変化
については、イメージが出来上がったと思います。つぎに、「形態学」と「生態学」について報告します。

 

 
 
2-3. 形態学 Morphologie ・・・ゲーテによる創始・・・

 高橋義人の解説によれば、
 ゲーテによって生物の生きた形態、変化生成する形態を捉えるものとして「形態学」が創始されました。「
有機的自然の形成と変形」として定義されます。さらに「ゲーテ形態学の中心概念をなすのは、メタモルフォーゼと“原型”である」として、植物や動物にもメタモルフォーゼを適用しました。

   高橋義人解説:形態学、岩波思想・哲学辞典参照

 

 2-4.  生態学
 科学史家のチャールズ・シンガーによれば、
生態学の基礎として、生命現象-生命活動と生命過程の研究は18世紀に始まり、19世紀にフランスのデュトロシェの「光合成」、ドイツのリービッヒによる「有機分析の方法」などにより
生体内の化学的変化の研究が進展してゆきました。(シンガー「生態学の基礎」参照
 また、1866年「
生態学エコロジー」として、生物と環境、生物と生物との相互関係を対象とする学問分野で、ドイツの生物学者エルンスト・ヘッケルによって造語されました。英語のエコロジーecologyは、Ökologieというドイツ語の英語表記で、ヘッケルによれば、古代ギリシア市民の住居と生産の場を兼ねた家を意味するギリシア語のオイコスoikosと学問を意味するロゴスlogosという語を合成してつくったと言われています。
 生物間の相互作用と食物連鎖・生態的地位の概念の整備・体系化がすすみ、槌田敦の『地球生態学で暮らそう』2009年)など、「生態系」の研究分野などへと拡張されてきています。


       
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 2-4.  生態系について

 
寺本英(1925-1996年、生物物理学者)の解説-によれば、
    (出典 三省堂大辞林/日本大百科全書(ニッポニカ)の解説)

  
生態系ecosystem.とは、
  「ある一定の地域で生息しているすべての生物と、その無機的環境とを含めて総合的なシステムとみた場合、それを生態系(エコシステム)という。とくに、そのなかでの
物質循環やエネルギーの流れ、さらに情報量あるいは負のエントロピーの維持・伝達といった機能的な側面に重点を置く。すなわち、太陽光線をエネルギー源として生産者(緑色植物)は、無機的環境から取り込んだ物質を素材として有機物を合成し、太陽光線のエネルギーが化学的エネルギーに転換される。これに依存して生活する消費者(動物)はその化学的エネルギーの一部を成長・増殖、さらに生活行動に必要な形態に転換して利用する。生産者および消費者の排出物や遺体は分解者(細菌や菌類。還元者ともいう)によって利用し分解され、物質はふたたび無機的環境に還元される。

  この過程で、太陽光線を供給源とするエネルギーを種々の形に転換して利用することにより、その生物共同体が維持されているが、熱力学の第二法則に従って、そのエネルギーは最後には熱として外界に放出される。したがって、生態系は、太陽光線をエネルギー源とし、無機的環境―生産者―消費者―分解者―無機的環境へと、物質の有機化・無機化の過程を通して循環させることにより営まれている一つの巨大な自律的機関であるとみなすことができる。こうした機能をもった生態系の構造の安定性や効率などの問題を明らかにすることは、生態系の性質を理解するうえで重要である。

 生物と環境を含めた総合的な見地の重要性は、古くから多くの人によって意識されていたが、エコシステムということばは1935年イギリスの植物生態学者タンズリーA. G. Tansley(1871―1955)によって初めて提唱された。ひと口に生態系といっても、その無機的環境の条件によってその様相はいろいろと異なっている。たとえば、海洋、湖沼、陸地、極地、砂漠などの生態系に区別されることがあるし、またその生物相の特性によって草原生態系、森林生態系あるいは鳥類生態系とか、耕地生態系、都市生態系など、最近ではきわめて広い範囲の対象に対して生態系ということばが使われるようになっている。
 生態系を、生物進化の視点から考察することが近年とくに重要視されるようになり、
進化生態学とよばれる分野の研究が盛んになりつつある。生態系の研究は今後、集団生物学や社会生物学などを総合した広い視野にたった学問の研究対象として理解がさらにいっそう深められていくことであろう。」

  
・・・次回、第2回報告>>資本論入門6月号-2- >>に続く・・・

   作業中です。しばらくお待ちください。・・・2018.05.27・・・