>>入門5月号第1部>>
『資本論』入門6月号 その1 (5月号第1部の続き)
第2節の要約
・・・・労働と商品価値について
資本論ワールド編集委員会事務局より
『資本論』入門5月号で第1節の課題を明らかにしてきました。
主な点は、
① 老バーボンの言う「商品種の価値の大いさ」の尺度機能の不具合について
② ヘーゲル論理学の「量Quantität」と「大いさGros」をめぐる価値量の定義について
③ 『資本論』の叙述過程における形態・形式Formの形式活動と実体Substanzについて
でした。
この3点が、これから探訪する第2節商品に表れた労働の二重性に連動してゆくことになりますが、第1節から第2節へ移行するにあたって、第1節最後の段落直前に第1版の本文が挿入されています。
(1)「われわれは、いまや価値の実体 Substanz を知った。それは、労働 Arbeit である。われわれは価値の大いさの尺度 Größenmaß を知った。それは労働時間 Arbeitszeit である。価値 Wert をまさに交換-価値Tausch-Wert にしてしまうその形態 Form は、これから分析する。」 〔第3節で分析〕
(2)「だがその前に、すでにここで見出された規定をいま少し述べていかなければならぬ。」 〔第2節の課題〕
<*注>ドイツ語原文の実体、労働、大いさの尺度、価値、交換-価値、形態〔形式〕は、すべて斜体になっている。
以上の文脈を念頭に置きながら、第2節の検討に入りましょう。
本日の出席メンバーは、4月と同じく、北部資本論研の小島さん、レポーターの小川さんそれに進行役の事務局の3人です。
レポーターの小川さんより、『資本論』の方法論の便利な手引きをまとめていだたいています。全体の見通しが改善されていますので、ご利用ください。
クリック>『資本論』の方法論(生命過程、社会有機体、ヘーゲル論理学の過程)>>
(1)初めに第2節の要約を行なってゆきます。
(2)次にレポーターから、5月号第1部の議論を受けて、第1節と第2節、そして次の第3節への継続性・関連性について報告を受けてゆきます。 → 資本論入門7月号参照、 第3節は、商品の物神性から見直します。
ここで、いったん区切りまして第2節の全体像について討論をお願いしたいと予定しています。
(3)最後に『資本論』テーマ別抄録に掲示しました「社会的分業」、「物質代謝」、「胚芽・幼虫・サナギ・羽化・チョウ」 などについて第1節、第2節の展開過程との関わりにふれてゆきたいと思います。今回も、大変盛り沢山です。 頑張っていきましょう。
<資本論ワールド編集委員会より>
→ 編集方針を変更しました。資本論入門7月号を参照下さい。『経済学批判』第1章商品に集約してゆきます。
→ 「資本論の方法論、 1. 生命科学の過程 2. 社会有機体の過程」 参照下さい
レポーターの小川です。
1ヶ月空白がありましたので、ゆっくりと進めてゆきますので、ご協力をお願いします。
第1章 『資本論』第2節 「商品に表わされた〔dargestellten:具現された〕労働の二重性」の要約
Doppelcharakter der in den Waren dargestellten Arbeit
1. 労働の二面性 ~ 経済学の理解について ~
商品は両面性のものとして、使用価値と交換価値として現われた。商品に含まれる労働の二面的な性質の理解が跳躍点で、詳細に吟味しよう。
2. 有用労働
二つの商品、例えば1着の上着(亜麻布価値の2倍:2W)と10エレの亜麻布(亜麻布価値:W)について、上衣、亜麻布を生産する労働を有用労働と名づける。
3. 社会的分業 〔『資本論』テーマ別社会的分業 検索〕
各種の使用価値または商品体の総体の中に、同じく属・種・科・亜種・変種等々の、有用労働の総体が現われている。-社会的分業である。お互いに商品として相対するのは、独立的でお互いに分かれている私的労働の生産物である。商品生産者の社会においては、多岐に分かれた労働の体制に、すなわち社会的分業に発展する。
4. 物質代謝 ~ 社会的分業から物質代謝へ ~ 〔『資本論』テーマ別物質代謝 検索〕
上衣・亜麻布等、自然に存在しない素材的富のあらゆる要素が現存するようになったことは、特別な人間的要求に特別な自然素材を同化させる特殊的な目的にそった生産活動によって、使用価値の形成者として、人間と自然との間の物質代謝 〔Stoffwechsel:素材転換〕 であり、永久的自然必然性である。
5. 素材形態の変更
商品体は、自然素材 〔Naturstoff〕 と労働の二つの要素の結合である。上衣・亜麻布等に含まれる一切の有用労働の総和を引き去るならば、つねに人間の加工なしに自然に存在する物質的基盤が残る。この素材の形態〔Formen der Stoffe〕を変更する労働は、自然力の援けをかりている。ペティが言うように、労働は素材的富の父であって、土地は母である。
6. <商品価値について> ~ 物質代謝から有機体の社会的過程へ ~
〔『資本論』テーマ別肉体的有機体~生産有機体 検索〕
・その価値はこの商品を単純労働生産物と等しい関係におく。
商品価値においては、生産的活動の特定性、労働の有用な性格を見ないとすれば、労働に残るものは、それが人間労働力の支出ということである。この労働は、平均してその肉体的有機体〔leiblichen
Organismus〕の中にもっている単純な労働力の支出である。
7. ある商品はもっとも複雑な労働の生産物かもしれない。その価値はこの商品を、単純労働の生産物と等しい関係におく。
したがって、それ自身、単純労働の一定量を表わしている。それぞれちがった種類の労働が、その尺度単位としての単純労働に整約される種々の割合は、生産者の背後に行われる一つの社会的過程によって確定され、したがって、生産者にとっては慣習によって与えられているように思われる。
7. 労働・膠状物Gallert ~ 生命過程の始まり ~ 〔『資本論』テーマ別 膠状物Gallert 検索〕
上衣や亜麻布という価値が、単なる同種の労働膠状物 blose gleichartige Arbeitsgallertenであるように、これらの価値に含まれている労働も、生産的な結びつきによるのではなく、ただ人間労働力の支出となっている。それらの労働が上衣価値や亜麻布価値の実体〔Substanz〕であるのは、ただそれらの特殊な質から抽象され*、両者が同じ質〔gleiche Qualität〕、人間労働の性質をもつかぎりである。
*ヘーゲル論理学では、質と量の関係について以下のように整理している。
「エンチクロペディ小論理学第1部有論、A質、B量、C量」
(1) 第1部有論85補遺
論理的理論のどの領域も、さまざまの規定から成る一つの体系的な全体であり、絶対的なものの一表現である。有もまたそうであって、それはそのうちに質(Qualitat)、量(Quantitat)、および限度(Mas)という三つの段階を含んでいる。
質とはまず有と同一の規定性(Bestimmtheit)であり、或るものがその質を失えば、或るものは
現にそれがあるところのものでなくなる。量はこれに反して有にとって外的な、無関係な規定性である。
例えば、家は大きくても小さくてもやはり家であり、赤は淡くても濃くてもやはり赤である。〔*注〕有の第三の段階である限度は、最初の二つの段階の統一、質的な量である。すべての物はそれに固有の限度をもっている。詳しく言えば、すべての物は量的に規定されており、それがどれだけの大きさを持つかは、それにとって無関係であるが、と同時にしかしこの無関係にも限度があって、それ以上の増減によってこの限界が踏み越えられると、物はそれがあったところのものでなくなる。限度から理念の第二の主要領域である本質(Wesen)への進展が生じる。
〔*注〕 『大論理学』第2篇大きさ(量)
「第三に、質的形式の中にある定量は量的比例(das quantitative Verhältniss)である。定量は単に一般に
自分を越えて進んで行くにすぎないが、しかし量的比例の中では、それは次のようになる。すなわち、ここでは
定量が他在の中で自分の規定をもつと同時に、他在も措定されて一個の他の定量であることになる。こうして、
ここには定量の自己復帰とそれの他在の中における自分への関係が存在することになる。
この比例の根底には、まだ定量の外面性がある。互いに関係し〔比例し〕あうものは互いに無関心的な定量
である。すなわちこの定量は、このような自己外存在の中に、その自己関係をもつものである。」
(2) 同じ質―人間労働の性質―が成立する構造
「上衣や亜麻布がそれらの特殊な質から抽象される」ことにより、「上衣価値や亜麻布価値の実体」が
現象してくるわけです。現象する「世界構造;自己外存在の自己関係の成立」のエレメントとして
「同じ質」〔単位・量への止揚〕、「価値」、そして 「実体」 の概念が構成されてゆきます。
この3者の相互関係は、第2節のもう一つのテーマとして地下水脈のように流れています。
8. 価値の大いさ〔Wertgröße〕 ・・・・「量Quantität」論の考察に入る・・・・
1着の上衣(2W)は10エレの亜麻布(W)の2倍だけの大いさの価値である。したがって、上衣の生産には、
労働力が亜麻布に比べて2倍の時間が支出されなければならない。
9. 量 Quantität と時間継続
価値の大いさについては、労働はすでに労働であること以外になんら質をもたない人間労働に整約されたのち、
ただ量Quantität(的)にのみ取り上げられているのである。
労働のどれだけ〔すなわち量〕ということ、すなわち、その時間継続〔労働時間の量〕ということが問題なのである。
10. ある商品の価値の大いさ Wertgrößeは、ただそれに含まれている労働の定量 Quantum のみを
表わしているのであるから、商品はある割合 gewisser Proportion をもってすれば、つねに同一の大いさの価値で
なければならぬ。 〔*量的比例の成立〕
〔量 Quantität の観点から、大いさ größeと定量 Quantumへと移動している。〕
11. 上衣の価値の大いさWertgrößeは、それ自身の量Quantitätとともに増大
1着の上衣の生産に必要な労働が2倍に増大するか、または半分だけ減少するという場合を仮定しよう。
第一の場合のおいては、1着の上衣〔の生産に必要な労働時間が2倍になった〕は、以前の2着の上衣と同じ価値をもつ。
後の場合には、2着の上衣〔1着の生産に必要な労働時間が半分になった〕が、
以前の1着の上衣と同じ価値をもつにすぎない。
12. 「素材的富の量Quantumの増大」と「その価値の大いさWertgrößeの同時的低下」の「相反する」運動
より大きな量の使用価値は、それ自身としてはより大きな素材的富をなしている。2着の上衣は1着よりは多い。
だが、素材的富の量が増大するのにたいしては、その価値の大いさの同時的低下ということが、相応じうる。*
この相反する運動は、労働の両面的〔二面的〕な性格から生じている。
生産力はつねに有用な具体的な労働の生産力である。有用労働は、その生産力の増大あるいは低下と正比例して、
より豊富な生産物源泉ともなれば、より貧弱なそれともなる。
これに反して、生産力の変化は、価値に表わされている労働それ自身には、少しも触れるものではない。
生産力は、労働がこの具体的な有用な形態から抽象されるやいなや、当然にもはや労働に触れることはできない。
したがって、同一の労働は、同一の期間に、生産力がどう変化しようと、つねに同一大いさの価値を生む。
*「素材的富の量の増大」と「その価値の大いさの同時的低下」の「相反する」運動は、
価値の大いさの表現形式に反映される。→第3節価値形態論の課題になる
13. 生産力は同一期間に、ちがった量の使用価値をもたらす
しかしながら、生産力は同一期間に、ちがった量の使用価値をもたらす。生産力が増大すればより多く、
それが低下すればより少ない。労働の生産度を増大させ、
したがって、これによってもたらされる使用価値の量を増加させる生産力の変化は、このようにして、
もしこの変化がその生産に必要な労働時間の総計を短縮するならば、この増大した総量の価値の大いさを減少させる。
同じように、逆の場合は逆となる。
14. 二つの属性〔Eigenschaft:固有の性質〕について
〔『資本論』テーマ別属性Eigenschaft参照〕
すべての労働は、一方において、生理学的意味における人間労働力の支出である。
そしてこの同一の人間労働、または抽象的に人間的な労働の属性*において、労働は商品価値を形成する。
すべての労働は、他方において、特殊な、目的の定まった形態における人間労働力の支出である。
そしてこの具体的な有用労働の属性*において、 それは使用価値を生産する。
*二つの属性のうち、「生理学的意味の人間労働力の支出である同一の抽象的に人間的な労働の属性」は、
どのような形式で、表示されるのか?→第3節価値形態論の課題になる。
*また、第4節商品の物神的性格では、商品の属性について商品語で語られている。
「商品が話すことが出来たら、こういうだろう。われらの使用価値が人間の関心事なのであろう。
使用価値は物としてわれらに属するものではない。が、われらに物として与えられているものは、
われらの価値である。」
「価値(交換価値)は物の属性であり、富(使用価値)は人の属性である。
この意味で価値は必然的に交換を含んでいるが、富はそうでない。」(注34、35)
以上で、第2節の報告を終了します。
事務局:
大変長い報告と丁寧な*注意書きをいただきありがとうございました。
長時間にわたりましたので、少し休憩をとりますので、
この間に各要約に添付された*注意書きや参照個所をながめておいてください。